コラム

企業の挑戦と未来への投資

2025.07.24

〜外国人材紹介の現場から〜

少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化する日本において、外国人労働者は今や企業活動に不可欠な存在です。しかし、彼らを単なる労働力としてではなく、企業の持続的な成長を支える貴重な「人財」として捉え、その能力を最大限に引き出すための人材育成に注力することが、我々人材を斡旋する企業の重要な使命であると考えております。外国人労働者の人材育成に関する企業の取り組みと、そこに横たわる課題について、現場の視点から述べさせていただきます。

 

人材育成における企業の積極的な取り組み

多くの企業が、外国人労働者の定着と活躍を促すため、多角的な人材育成に取り組んでいます。その中心となるのが、円滑なコミュニケーションの基盤となる日本語教育です。業務上の指示理解にとどまらず、同僚との信頼関係構築や日本文化への適応を目的とし、レベル別の研修や「やさしい日本語」の活用、さらには動画マニュアルの導入など、様々な工夫が見られます。

豊岡市の旅館の代表からは、 「母国を離れ、知らない土地でいつも笑顔で前向きにお仕事を頑張るお二人にはいつも勇気をもらっています。お仕事だけではなく、地域のコミュニティにも積極的に参加して、仲間と交流し自然と共に生きる竹野ライフを楽しんでいる姿が地域を元気にしています。会社の成長がお二人の成長に繋がるようにしっかり学んでいく所存です」とのお声をいただいています。同旅館では、外部での社員研修に参加させてもらって、将来のマネージャー昇格へキャリアプランを整備されているそうです。

続いて大阪の飲食店のオーナーさんからは、 「株式会社 CONVI さんから紹介していただいたインドネシア人材の方は、とても真面目で、日本語もバッチリ通じるので、スタッフ間のコミュニケーションも円滑にできています。 時間に対してきちんと守り、責任感をもって仕事に取り組んでくれているので、安心して雇用できています。 厨房での作業も最近は出来ることも増えてきていて、今ではなくてはならない立派なスタッフです。 初めての外国人雇用で不安はありましたが、お店、インドネシアス人タッフへの親切な対応、アフターフォローもしっかりしていただいているので、安心です」とのお声をいただいています。

専門的なスキルや知識の向上も重要な育成の柱です。 OJT (On-the-Job Training) による実践的な指導はもちろんのこと、資格取得支援や外部研修への参加を促すことで、労働者個人のキャリアアップ意欲に応え、企業の生産性向上にも繋げています。また、メンター制度を導入し、業務の指導だけでなく、日本の職場文化や生活面での不安を解消するためのサポート体制を整える企業も増えています。定期的な面談を通じて、キャリアに関する意向をヒアリングし、個々の希望に沿ったキャリアパスを提示することも、モチベーション維持に不可欠です。

さらに、文化的な背景の違いから生じる誤解や摩擦を防ぐため、異文化理解研修の実施も欠かせません。これは外国人労働者だけでなく、受け入れる日本人社員にとっても、多様な価値観を理解し、尊重する組織風土を醸成する上で極めて有意義な取り組みと言えます。

 

人材育成において直面する課題

こうした積極的な取り組みの一方で、人材育成の現場では数多くの課題に直面しているのが実情です。最も大きな障壁は、依然として「言語の壁」です。業務に必要な最低限のコミュニケーションは取れても、細かなニュアンスや背景にある文化的な文脈まで理解し、円滑な人間関係を築くには多くの困難が伴います。

また、育成にかかるコストと時間の負担も企業にとって大きな課題です。特に中小企業においては、体系的な教育プログラムを構築し、継続的に実施するためのリソースが限られています。時間と費用をかけて育成した人材が、より良い条件を求めて早期に離職してしまうリスクも、企業が投資を躊躇する一因となっています。

さらに、外国人労働者自身が日本での長期的なキャリアを展望しにくいという問題も存在します。多くの外国人労働者が、昇進・昇格の遅さや明確なキャリアパスが提示されないことに不満を抱えているという調査結果もあります。企業側が、彼らの能力や意欲を正当に評価し、将来のビジョンを共有できるようなキャリアパスを設計・提示できるかどうかが、定着率向上の鍵を握っています。
受け入れ側の体制整備の遅れも深刻な課題です。現場の社員が外国人労働者との接し方に戸惑い、十分なサポートが提供できていないケースも少なくありません。外国人労働者が孤立することなく、安心して能力を発揮できる環境を整えるためには、企業全体の理解と協力体制の構築が急務です。

 

共に未来を想像するパートナー

外国人労働者の人材育成は、言語や文化の壁、コスト負担、キャリアパスの提示といった多くの課題を伴う、決して容易ではない取り組みです。しかし、これらの課題から目を背けることなく、一つひとつに真摯に向き合い、解決していく努力こそが、企業の未来を切り拓くと確信しております。外国人労働者を単なる「労働力」ではなく、共に未来を創造する「パートナー」として迎え入れ、彼らの成長を支援することが、ひいては企業の国際競争力を高め、日本社会全体の持続的な発展に繋がるものと信じてやみません。