2026年も春を迎え、いよいよ「育成就労制度」の本格的なスタートが目前に迫ってまいりました。長らく日本の産業を支えてきた技能実習制度からの歴史的な転換となるこの新制度において、全国の経営者様から私のもとへ最も多く寄せられるご相談があります。それが、「転籍(転職)」要件の緩和に対する強烈な不安です。
「せっかく時間とお金をかけて仕事を教え、日本語を指導しても、数年で時給の高い都会の企業や大企業に引き抜かれてしまうのではないか」というお悩みは、企業を存続させる上で当然の懸念です。本稿では、この育成就労制度における最大の焦点とも言える「転籍」のリスクに対し、私たち中小企業がどのように向き合い、どのようなリテンション(引き留め)策を講じるべきかについて、インドネシア人材の特性を知り尽くした株式会社 CONVIの視点から、詳細かつ実践的な戦略をお伝えいたします。
まず、育成就労制度において転籍がどのように変わるのか、その本質を正確に捉える必要があります。旧来の技能実習制度では、原則として実習先を変更することは認められていませんでしたが、新たな育成就労制度では、一定の要件(同一業務分野であること、1年から2年程度の就労期間を経ていること、一定水準の技能および日本語能力を有していることなど)を満たせば、本人の意向による転籍が合法的に認められるようになります。
この制度変更は、外国人労働者を「縛り付ける」時代から、「選ばれる」時代への完全なパラダイムシフトを意味しています。しかし、これを単なる「人材流出の危機」と悲観する必要はありません。むしろ、適切なリテンション策を講じることで、自社の労働環境を見直し、日本人従業員も含めた組織全体の魅力を底上げする絶好のチャンスと捉えるべきです。転籍が自由になるということは、裏を返せば、魅力的な企業であれば他社で経験を積んだ優秀な人材を「受け入れる側」にもなれるという事実を忘れてはなりません。
転籍の話題になると、多くの経営者様が「結局は給与(時給)が高いところに逃げられるのだろう」とおっしゃいます。確かに金銭的な条件は重要ですが、インドネシア人材のリアルな声を聞くと、離職の決定的な理由は「お金」そのものよりも、「職場の人間関係」や「将来への不安」、そして「自分の存在が大切にされていないという孤独感」にあることが圧倒的に多いのです。
したがって、資金力で大企業に対抗できない中小企業が取るべき最強の引き留め策は、時給競争に乗ることではなく、職場における「心理的安全性」を圧倒的なレベルで構築することです。インドネシアの人々は、「ゴトン・ロヨン」と呼ばれる相互扶助の精神を非常に大切にしており、自分を「単なる労働力」として扱う冷たい職場よりも、少しお節介なくらいに自分を気にかけてくれ、失敗しても見捨てずに指導してくれる「家族のような職場」を深く愛します。
大阪の企業様には、この「お節介で温かいコミュニケーション」を自然に行える土壌があります。「昨日よく眠れたか?」「ご飯はちゃんと食べているか?」といった日常の些細な声かけが、彼/彼女らの承認欲求を満たし、「この社長のため、この先輩のために頑張りたい」という強力なエンゲージメント(会社への愛着)を生み出します。
心理的な繋がりに加えて不可欠なのが、明確なキャリアパスの提示です。若く意欲的なインドネシア人材は、「今の会社に居続ければ、自分はどのように成長し、どのような未来を手にできるのか」を常に考えています。
「3年後には特定技能1号の試験に合格できるよう、会社が費用を負担して講習を受けさせる」「5年後には現場のリーダー(班長)として後輩の指導を任せ、役職手当を支給する」「さらにその先には、特定技能2号を取得し、家族を日本に呼び寄せるサポートも行う」といった、具体的な将来像(ビジョン)を入社直後から継続的に語り合ってください。
さらに、業務を教える際のコミュニケーション手段として「やさしい日本語」の徹底も重要です。指示を明確に、短く、分かりやすい言葉で伝えることは、業務上のミスを防ぐだけでなく、「自分を理解しようと歩み寄ってくれている」という企業側の姿勢を示す強力なメッセージとなります。
ここまで述べてきたリテンション施策を、企業様単独で実行するのは非常に労力がかかります。CONVIでは、インドネシア語に精通した母国語対応の専門スタッフが、定期的な面談や24時間対応の相談窓口を通じて彼/彼女らのリアルな本音を拾い上げます。時には企業様と労働者の間に入って誤解を解く通訳・仲裁役を果たします。
また、企業様向けには、インドネシアの文化や宗教(イスラム教の礼拝やハラールへの配慮など)に関する研修を実施し、無意識の摩擦を減らすための体制づくりをサポートいたします。彼/彼女らのアイデンティティである宗教や文化を会社が尊重しているという事実は、他社には簡単には真似できない強力な引き留め要因となります。
労働者が会社を選ぶ時代において、力による囲い込みはもはや通用しません。必要とされているのは、国籍を問わず「ここでずっと働きたい」と思える魅力的な職場環境を創り上げるという、経営の原点への回帰です。
株式会社 CONVIは、大阪を拠点に、インドネシア人材の底知れぬポテンシャルと、日本企業の皆様の熱い想いを結びつける存在であり続けます。転籍という未知のリスクに不安を抱えておられる経営者様、どうぞ私たちにご相談ください。人材が定着し、企業の成長エンジンとして長く活躍するための具体的な戦略と体制づくりを、共に二人三脚で進めてまいりましょう。