コラム

【定着率を劇的に上げる】外国人労働者と日本人の「同一賃金・同一評価」を実現する公平な人事評価シート作成術

2026.07.06

【定着率を劇的に上げる】外国人労働者と日本人の「同一賃金・同一評価」を実現する公平な人事評価シート作成術

2026年もいよいよ本格的な夏の到来を感じさせる力強い日差しが降り注ぐ季節となりました。春に入社した新しい従業員の皆様も、配属から数ヶ月が経ち、日々の業務に頼もしさを感じる場面が増えてきた頃かと存じます。同時に、来たる育成就労制度の本格施行を見据え、外国人労働者の採用と定着に向けた社内体制の抜本的な見直しに迫られている経営者様も多いのではないでしょうか。現在、私のもとに寄せられるご相談の中で、採用そのものの次に多く、かつ最も根深い課題となっているのが「人事評価」に関するお悩みです。

「日本人と同じように評価してよいのか」「日本語が未熟な彼/彼女らの賃金をどう設定すれば、社内全体の納得感が得られるのか」「評価基準が曖昧なままでは、不満を抱えて辞めてしまうのではないか」といったご相談は、外国人材を単なる一時的な労働力としてではなく、企業の未来を担う真の戦力として迎え入れようとするからこそ生じる、非常に前向きで健全な壁です。

本稿では、外国人労働者の長期的な定着と戦力化に不可欠な「公平な人事評価制度の構築」というテーマに焦点当てます。日本人と外国人を同一賃金・同一評価で結びつけるための「評価シート作成術」について、インドネシア人材の特性を知り尽くした株式会社 CONVIの視点から、圧倒的な詳細さをもって徹底解説いたします。

 

「外国人だから」というアンコンシャス・バイアスからの完全なる脱却

外国人労働者を雇用する際、かつて日本社会の一部に蔓延していた「安価な労働力」「景気の調整弁」という認識は、現在のコンプライアンスや国際的な人権基準、そして何より昨今の深刻な人手不足社会においては、もはや一切通用しません。労働基準法第三条が定める「国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」という大原則はもちろんのこと、「同一労働同一賃金」の考え方は、日本人従業員と同様に外国人労働者にも極めて厳格に適用されます。

しかし、実際の現場の実態はどうでしょうか。法律が定める最低賃金や基本的な基準はクリアしていても、ボーナスの査定や昇給の基準において、無意識の偏見 (アンコンシャス・バイアス) が入り込んでいるケースが依然として少なくありません。「仕事は真面目にやっているけれど、外国人だからこれくらいでいいだろう」 「まだ入社数年目だし、日本人の若手より給料を高くすると現場の空気が悪くなる」「どうせ数年で帰国するのだから、長期的な評価や昇格は必要ない」といった、業務の成果とは全く無関係な理由で評価に差をつけてしまうことは、彼/彼女らのモチベーションを著しく低下させ、企業への信頼を根本から破壊します。

特に私たちがご紹介しているインドネシアの若者たちは、非常に向上心が強く、自らのキャリアアップや家族への仕送りに対して真剣そのものです。彼/彼女らは非常に強力なコミュニティを持っており、SNSなどの社内外の情報ネットワークを通じて、自分の評価や賃金が同業他社や同じ現場の日本人と比べて不当に低いのではないかと敏感に察知します。育成就労制度への移行に伴い「転籍の自由」が実質的に拡大していく今後の労働市場において、不透明で理不尽な人事評価は、手塩にかけて育てた優秀な人材が他社へと流出してしまう最大の引き金となります。公平な評価制度を持たない企業は、労働市場から淘汰されるリスクを抱えていると言っても過言ではありません。

 

「日本語能力」と「業務遂行能力」を明確に切り分ける評価のジレンマ

同一賃金・同一評価の制度を構築する上で、多くの企業様が直面する最も大きなジレンマが「日本語能力」の扱いです。経営者や現場のリーダーからよく聞かれるのが、「日本人と同じだけの作業スピードや正確性はあるが、日本語での日報の作成や、複雑な指示の理解ができない。時には通訳やサポートが必要になる。これで日本人と完全に同一評価と言えるのか」という疑問です。これは現場のリアルな感情であり、非常に真っ当な悩みです。

この複雑な問題を解決する唯一の鍵は、評価軸の中で「日本語能力」と「業務遂行能力」を明確に切り分けて定義することにあります。ごちゃ混ぜにして感覚的に評価するから、不公平感が生じるのです。

例えば、製造現場における機械のオペレーションや加工作業そのものに対する「技能・成果の評価基準」と、コミュニケーションや書類作成に関する「語学の評価基準」を完全に分けます。加工作業においては日本人と同等のスピード、正確性、不良品率の低さを達成しているならば、その項目に関しては日本人と同じ最高評価を与えなければなりません。ここを言葉の壁を理由に減点してしまうと、「いくら仕事を頑張っても認めてもらえない」 という絶望感を与えてしまいます。

一方で、日本語能力については、現在のレベルを客観的に評価し、次のステップや役職に進むために必要な日本語要件を明確に明示します。「現在の日本語レベルではリーダーにはなれない」と伝えるだけでなく、「どうすればなれるのか」を示すのです。重要なのは、業務の成果に直接関係のない高度な日本語力を理由に、全体の評価を不当に押し下げないことです。

さらに、日本語能力の向上自体をプラスの評価項目に組み込むことも非常に有効です。例えば「日本語能力試験(JLPT)のN3に合格した」「現場で使用する専門用語を新たに100個覚えた」「朝礼で日本語の短いスピーチができた」といった努力のプロセスを、資格手当や昇給に直結させる仕組みを作れば、彼/彼女らの学習意欲は爆発的に高まります。言葉の壁を「評価を下げるネガティブな理由」にするのではなく、「成長の目標でありプラスアルファの評価対象」として評価シートに組み込むという、人事発想の転換が必要不可欠です。

 

納得感を生む「多言語対応・行動ベース」の評価シート作成術

では、具体的にどのような評価シートを作成すれば、国籍を問わず公平で、誰もが納得できる評価が可能になるのでしょうか。最大のポイントは、抽象的な基準を徹底的に排除し、具体的な行動(コンピテンシー) に基づいた基準を設けること、 そしてそれを「彼/彼女らが確実に理解できる言語」で提示することです。

まず、日本の伝統的な人事評価でよく用いられる「協調性がある」「積極的に業務に取り組んでいる」「責任感がある」といった情意評価 (やる気や態度の評価)は、文化や言語の壁を越えて客観的に測ることが極めて困難です。「積極的」の定義は、日本人とインドネシア人とでは大きく異なります。日本人は空気を読んで行動することを積極的と捉えがちですが、海外では明確に発言することを積極的と捉えます。

これを防ぐためには、抽象的な言葉を、「誰が見ても明らかに行動の有無を判断できる基準」に変換しなければなりません。

・「協調性」であれば、「困っている他のメンバーを自発的にサポートし、チームの作業の遅れを月に○回カバーした」
・「積極性」であれば、「業務の効率化に関する改善提案を月に○件提出した」
・「責任感・安全性」であれば、「安全確認の指差呼称を毎日欠かさず大きな声で行っている」「ルール違反をした同僚を注意できた」

といった具合です。これにより、評価者である日本人上司の主観や、「なんとなく頑張っているから」「愛想が良いから」といった偏見が入り込む余地をなくすことができます。

次に絶対不可欠なのが、評価シート自体の「多言語化」です。どれほど立派で精緻な評価基準を作っても、日本語の難しい漢字や専門的な人事用語で書かれていては、彼/彼女らには自分が何を期待され、何を頑張れば給料が上がるのか、どうすればキャリアアップできるのかが全く理解できません。理解できないルールで評価されることほど、労働者にとって苦痛なことはありません。

評価シートは必ず「やさしい日本語(短文で、難しい熟語を避けた表現)」で記載し、その横に彼/彼女らの母国語であるインドネシア語の翻訳を併記してください。自分の目標を母国語で深く、正確に理解できる環境があって初めて、彼/彼女らは評価制度に対して真の公平感と納得感を抱き、自律的に努力するようになるのです。

 

評価は「結果を突きつけるもの」ではなく「育成のプロセス」である

公平な多言語評価シートが完成したら、次に重要になるのが現場での「運用方法」です。人事評価の真の目的は、単に給与やボーナスの額を決めることではありません。社員一人ひとりの成長を促し、モチベーションを高め、組織全体の生産性と人間力を底上げすることにあります。したがって、評価期間の終わりに、一方的に「あなたの評価はBでした」と結果を突きつけるような冷たい運用は絶対に避けるべきです。

期初には、多言語化された評価シートを基に、必要であれば通訳を交えながら「今期、会社はあなたにどのような役割を期待しているか」「どの目標をクリアすれば評価が上がるのか」をしっかとすり合わせる面談を行います。ここで合意形成を図ることがすべての出発点です。

そして期中には、1ヶ月や3ヶ月に一度、定期的な1on1のフィードバックの場を設けます。ここで活きてくるのが、インドネシア人材特有の文化への理解です。彼/彼女らは「人前で叱責されること(面子を潰されること)」を極端に嫌う一方で、一対一で丁寧に指導され、認められることで強烈なロイヤリティ (忠誠心)を発揮します。「ここはすごく良くなっている、素晴らしい」 「ただ、この行動は評価基準に達していないから、来月はこう改善してみよう。会社も全力でサポートするから」という対話と伴走を重ねることで、彼/彼女らは「会社は自分を正当に見ている、単なる労働力としてではなく一人の人間として育てようとしてくれている」という絶対的な安心感を得ます。

インドネシア人材は、このような上司との温かいコミュニケーション、承認、そして家族のような絆を非常に大切にします。そのため、このフィードバック面談の質が、そのまま定着率に直結すると言っても決して過言ではありません。

 

日本人社員にも波及する「真の多文化共生」と組織の飛躍

日本人と外国人を同一賃金・同一評価で処遇する公平な人事評価制度の構築は、一朝一夕にできるものではありません。現状の業務を細かく棚卸しし、行動基準を明確に言語化し、透明性の高い評価の仕組みを作り上げるプロセスは、企業にとって多大な労力を伴います。

しかし、このプロセスは結果として、日本人従業員にとっても計り知れない恩恵をもたらします。「誰がどのような成果を出せば評価されるのか」「会社は何を求めているのか」が明確になるため、これまで曖昧な評価に不満を抱いていた日本人若手社員のモチベーションアップにも直結するのです。つまり、外国人労働者のために作った公平で客観的な評価制度が、社内全体の不満を解消し、属人的なマネジメントから脱却させ、組織の近代化・DX化を強力に推し進める最大の原動力となります。

株式会社CONVIは、大阪を中心とした関西一円から日本全国へ向けて、単なる外国人材の紹介にとどまらず、入社後の「評価・育成・定着」までを見据えた深い伴走型の支援を行っております。インドネシアの文化や言語に精通したスタッフが、企業様ごとの業務内容に合わせた多言語対応の評価シートの作成支援や、インドネシア語通訳を交えた定期面談のサポートを行います。さらには、評価者となる日本人管理職向けに、アンコンシャス・バイアスを取り除くための異文化マネジメント研修など、企業様の実情と課題に合わせた最適なソリューションを包括的に提供いたします。

「頑張った人が、国籍や言葉の壁に関係なく正当に報われる会社」。この当たり前で、しかし実現が最も難しい理想を形にした企業こそが、次代の労働市場、特に育成就労制度下において圧倒的な勝者となります。公平な制度構築に悩まれている経営者、人事担当者の皆様、ぜひ一度、株式会社 CONVIにご相談ください。皆様の企業が、アジアの優秀な人材から「心から選ばれる企業」として飛躍するための力強い一歩を、私たちが全力で後押しいたします。共に、多様な才能が躍動する新しい時代の強い組織を創り上げましょう。