コラム

企業と外国人労働者の円滑なマッチングに向けて

2025.05.01

〜外国人材紹介の現場から〜

外国人労働者の在留資格は、私たち外国人材紹介に携わる者にとって、企業の成長と外国人労働者の活躍を支援する上で、非常に重要なテーマです。多岐にわたる在留資格の種類、複雑な取得要件、煩雑な手続きは、企業と外国人労働者の双方にとって大きな負担となるだけでなく、日本経済全体の成長を阻害する要因にもなりかねません。

 

複雑で負担の大きい在留資格制度

現在、日本には就労可能な在留資格だけでも19種類が存在しますが、それぞれの資格には細かな要件が定められており、企業は自社の業務内容や外国人労働者のスキルに合致する資格を慎重に選択する必要があります。しかし、専門的な知識がない企業にとって、どの在留資格が適切かを判断することは容易ではありません。

例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、ITエンジニアや通訳など、専門的な知識や技術を持つ外国人を雇用する場合に必要ですが、要件が細かく、企業は外国人労働者の学歴や職務経験を証明する書類を多数準備する必要があります。また、「特定技能」の在留資格は、人手不足が深刻な介護や建設などの分野で外国人を雇用する場合に必要ですが、対象となる職種や業務内容が限定されており、企業は外国人労働者の技能試験の合格を証明する書類などを準備する必要があります。

このように、在留資格の種類ごとに異なる要件や手続きがあるため、企業は外国人労働者の雇用に多くの時間と労力を費やさなければなりません。特に、中小企業にとっては、専門の担当者を置く余裕がなく、煩雑な手続きに苦慮するケースも少なくありません。

また、外国人労働者にとっても、在留資格の取得は大きな負担となります。日本語能力が十分でない場合、申請書類の作成や必要書類の準備に時間がかかり、不慣れな日本の制度に戸惑うこともあります。さらに、在留資格の取得が遅れると、就労開始が遅れたり、内定を取り消されたりする可能性もあり、経済的な不安を抱えることにもなりかねません。

 

制度理解、煩雑な手続き、不法就労リスク

外国人労働者を雇用する企業は、複雑な在留資格制度の理解、煩雑な申請手続き、在留資格の更新・変更手続き、不法就労のリスク、外国人労働者のキャリアパス設計など、多くの課題に直面しています。

特に、不法就労のリスクは、企業にとって大きな懸念材料です。在留資格のない外国人や資格外活動を行う外国人を雇用した場合、企業も不法就労助長罪に問われる可能性があり、罰金や懲役などの厳しい罰則が科せられることもあります。

また、在留資格の種類によっては、在留期間や活動範囲に制限があり、外国人労働者のキャリアパス設計が難しいという課題もあります。例えば、「特定技能」の在留資格は、原則として通算5年までしか在留できません。そのため、企業は外国人労働者の長期的なキャリアプランを立てることが難しく、外国人労働者も将来への不安を抱えながら働くことになります。

 

制度の簡素化、オンライン申請推進、キャリアパス明確化

外国人労働者の受け入れを促進するためには、在留資格制度の簡素化と明確化が不可欠です。各在留資格の要件を明確化し、手続きを簡素化することで、企業と外国人労働者の負担を軽減する必要があります。

具体的には、オンライン申請の推進、類似した在留資格の統合、在留資格の制限緩和によるキャリアパスの明確化、企業や外国人労働者向けの相談窓口の拡充などが求められます。

オンライン申請を推進することで、申請書類の作成や提出が容易になり、手続きの効率化と迅速化を図ることができます。また、類似した在留資格を統合することで、企業は外国人労働者のスキルや経験に合った資格を選択しやすくなります。

さらに、在留資格の制限を緩和し、外国人労働者のキャリアパスを明確化することで、長期的な雇用を促進することができます。例えば、「特定技能」の在留期間を延長したり、他の在留資格への変更を容易にしたりすることで、外国人労働者は日本でのキャリアプランを描きやすくなります。

また、企業や外国人労働者向けの相談窓口を拡充し、在留資格に関する情報提供や相談支援を行うことも重要です。専門家による相談体制を整備することで、企業は適切な在留資格の選択や申請手続きに関するアドバイスを受けることができ、外国人労働者は在留資格に関する不安や疑問を解消することができます。

 

在留資格制度と雇用慣行の齟齬、そして学歴要件による差別

ここで、日本の在留資格制度が抱える構造的な問題にも目を向ける必要があります。多くの在留資格、特に専門職系の資格は、ジョブ型雇用システムを前提とした設計となっています。つまり、特定の職務内容に必要なスキルや知識を持つ人材を、その職務に限定して受け入れるという考え方です。

しかし、日本の雇用システムは、終身雇用や年功序列を特徴とするメンバーシップ型雇用が依然として主流です。メンバーシップ型雇用では、採用時に特定の職務を限定せず、長期的な育成や配置転換を通じて、従業員の能力を多角的に活用していく傾向があります。このため、ジョブ型雇用を前提とした在留資格制度は、日本の雇用慣行と必ずしも合致せず、外国人労働者の柔軟なキャリア形成を阻害する要因となることがあります。例えば、入社後に異なる部署への異動を希望しても、在留資格の範囲外であるために認められないといったケースが生じえます。

また、一部の在留資格においては、学歴が厳格な要件となっていることも、看過できない問題です。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、原則として大卒以上の学歴が求められます。しかし、必ずしも高学歴でなくても、高度なスキルや豊富な実務経験を持つ外国人人材は多く存在します。学歴のみを判断基準とすることは、これらの有能な人材の活躍の機会を奪い、結果として日本経済全体の損失にも繋がりかねません。これは、能力による公正な評価という観点からも、差別的な要素を含んでいると言わざるを得ません。

 

専門知識を活かし、企業と外国人労働者の架け橋に

私たち外国人材紹介企業は、在留資格に関する専門知識を活かし、企業と外国人労働者の円滑なマッチングを支援する役割を担っています。

在留資格に関する情報提供、申請書類の作成支援、在留資格の更新・変更手続きのサポート、不法就労防止のための啓発活動、外国人労働者のキャリアパス設計支援に加え、日本の雇用慣行と在留資格制度のギャップを埋めるためのアドバイスや、学歴に偏らない人材評価の重要性の啓発など、多岐にわたる支援を提供しています。

私たちは、企業と外国人労働者の双方にとって最適なマッチングを実現し、日本社会の多様性と活力向上に貢献していきたいと考えています。そのためにも、より柔軟で、実態に即した在留資格制度の実現に向け、積極的に提言活動を行ってまいります。