コラム

技能実習制度の現状と課題、未来へ

2025.04.08

〜外国人材紹介の現場から〜

今回は、長年にわたり日本の外国人労働を支えてきた「技能実習制度」の見直しについて、述べさせていただきます。

 

労働力不足を補う一方で多くの課題も

技能実習制度は、開発途上国等の若者が日本の技能を習得し、母国の経済発展に貢献することを目的として1993年に創設されました。しかしながら、その実態は、深刻な労働力不足に悩む日本の産業界にとって、安価な労働力を確保するための手段として利用されてきた側面が否めません。

私たちの現場では、多くの意欲ある若者が技能習得を目指して来日する一方で、劣悪な労働条件、低賃金、ハラスメント、そして技能習得とはかけ離れた単純作業に従事せざるを得ないケースを数多く目の当たりにしてきました。

「研修・実習」という名目の下、外国人労働者の人権が十分に守られていないという批判は国内外から根強く、国際的な非難を浴びることも少なくありませんでした。長年にわたり、この制度が「人権侵害の温床」と指摘されてきたことは、私たち外国人材紹介に携わる者としても、重く受け止めなければならない事実です。

 

技能実習制度の主な課題

技能実習制度が抱える主な課題は以下の通りです。

  1. 目的と実態の乖離: 技能習得という本来の目的が形骸化し、労働力確保の手段と化している
  2. 人権侵害のリスク: 低賃金、長時間労働、安全配慮の欠如、ハラスメントなど、実習生の人権が侵害される事例が後を絶たない。
  3. ブローカーの介在と搾取: 不透明な手数料や契約により、実習生が経済的な負担を強いられるケースが多い。
  4. 監理団体の質のばらつき: 適切な指導・監督を行わない監理団体が存在し、問題の発見や解決を遅らせている。
  5. キャリアパスの不明確さ: 技能習得後のキャリアパスが明確に示されず、実習生のモチベーション低下につながっている。
  6.  特定技能制度との接続以降の不備:特定技能に移行する制度はできますが、高卒就労者は技人国へのキャリアップができないなど依然として仕組みが十分に整備されていない。

 

本質的な改革を期待

現在、政府主導で技能実習制度の見直しに向けた議論が進められています。私たちは、今回の見直しが、制度の理念と実態の乖離を解消し、外国人労働者の人権を尊重した、より持続可能な制度へと発展することを強く期待しています。

見直しにおいては、以下の点が重要になると考えます。

  1. 「育成」という原点への回帰: 目先の低賃金労働者としてのみ見るではなく、技能習得と人材育成を制度の中心に据えるべきです。
  2. 実習生の権利保護の強化: 労働関連法規の遵守徹底はもちろんのこと、人権侵害に対する監視体制の強化、相談窓口の拡充、救済措置の充実を図るべきです。
  3. 透明性の向上と悪質ブローカーの排除: 手数料や契約内容の明確化、悪質な仲介事業者の排除に向けた厳格な措置が必要です。
  4. 監理団体の役割の再定義と質の向上: 監理団体の責任を明確化し、指導・監督能力の向上、第三者による評価システムの導入などを検討すべきです。
  5. 明確なキャリアパスの提示: 技能習得とキャリアアップが連動する仕組みを構築し、実習生のモチベーションを高める必要があります。特定技能制度との円滑な接続も不可欠です。
  6. 企業側の意識改革と受け入れ体制の整備支援: 外国人労働者を単なる労働力としてではなく、共に成長するパートナーとして捉える意識改革を促すとともに、多文化共生に向けた企業の受け入れ体制整備を支援すべきです。

 

現場の声と企業意識改革の重要性

私たち外国人材紹介企業は、技能実習制度の課題を誰よりも肌で感じてきました。今回の見直しにおいては、現場の声に真摯に耳を傾け、実効性のある改革を進めていただきたいと切に願います。また、制度の見直しと並行して、企業側の意識改革も不可欠です。外国人労働者は、日本の経済社会を支える重要な一員です。彼らが安心して働き、能力を発揮できる環境を整備することは、企業の持続的な成長にも繋がります。

私たちも、長年の経験と知識を活かし、企業と外国人労働者の双方にとってより良い関係構築を支援していく所存です。技能実習制度の見直しが、外国人労働者の人権が尊重され、日本社会全体の活力向上に繋がるような、実りあるものとなることを心から願っています。