コラム

共生社会への道筋を拓く

2025.12.01

〜外国人材紹介の現場から〜

私たちは、日本の労働力不足を補う上で外国人労働者の存在が不可欠であると同時に、経済の活性化にも寄与すると確信しています。しかし、その実現には、多岐にわたる課題への真摯な対応が求められます。

 

情報の非対称性が生み出すミスマッチと機会損失

私たちが現場で最も強く感じる課題は、「情報の非対称性」がもたらす深刻な影響です。来日する外国人労働者の多くは、日本の労働環境、賃金体系、福利厚生、さらには生活習慣や文化について、十分な情報を得られないまま来日しているのが現状です。母国での情報源が限られていることや、一部の悪質なブローカーによる誤った情報提供が、この問題をさらに複雑化させています。

一方、受け入れ企業側も、外国人労働者の文化的背景、宗教、生活習慣、そして個々のスキルやキャリアプランを十分に理解できていないケースが少なくありません。採用の場面では、履歴書や面接での限られた情報のみで判断しがちであり、入社後に初めて文化の違いやコミュニケーションの壁に直面することも頻繁に起こります。このような情報の断絶は、労働者と企業双方にとってのミスマッチを生み出し、早期離職や労使間のトラブルの原因となるだけでなく、彼/彼女らが本来持っている潜在能力を十分に引き出せないという、大きな機会損失に繋がっています。言葉の壁は、この情報の非対称性を一層深刻化させ、些細な誤解が大きな問題へと発展するケースも少なくありません。

 

コミュニケーションと寛容力の課題

残念ながら、日本社会全体として、彼/彼女らに対する理解や共感がまだ十分とは言えず、その根底には「コミュニケーションの壁」と「社会的慣用力の低さ」という二つの大きな要因が横たわっています。

コミュニケーションの壁

まず、「コミュニケーションの壁」は、単に日本語能力の不足に留まりません。もちろん、流暢な日本語を習得するまでには多大な時間と努力が必要であり、これは労働者にとって大きな負担です。職場での業務指示の理解、同僚との雑談を通じた人間関係の構築、緊急時の情報伝達など、あらゆる場面で言語の壁は外国人労働者のストレスとなります。

しかし、より深く根差しているのは、非言語コミュニケーションにおける壁です。日本の文化では、直接的な表現を避け、空気を読む、相手の意図を察するといった間接的なコミュニケーションが重視されます。これは、外国人労働者にとっては理解が非常に困難な側面です。例えば、上司からの遠回しな注意を理解できなかったり、同僚の遠慮がちな誘いを断られたと誤解したりするなど、文化的な背景の違いからくる非言語のサインの読み取りミスが、職場の人間関係の軋轢や孤立に繋がることが頻繁に発生します。また、感情表現の違いも大きく影響します。日本人が感情を内に秘める傾向があるのに対し、出身国によっては感情を豊かに表現することが一般的である場合もあり、こうした違いが誤解や偏見を生む土壌となり得ます。

地域社会においても、このコミュニケーションの壁は深刻です。近隣住民との挨拶、回覧板の内容理解、地域のイベントへの参加など、日常的な交流の場で言語や文化の違いが障壁となり、外国人労働者は孤立しがちです。ゴミの分別方法一つとっても、外国人にとっては日本特有の細かなルールがあり、言葉が理解できなければ、意図せずルール違反をしてしまい、それが地域住民との摩擦の原因となることも少なくありません。こうした経験が積み重なることで、「自分は歓迎されていないのではないか」「異物として見られているのではないか」という不安感や疎外感が募り、地域への帰属意識を醸成することが極めて困難になります。

社会的寛容力の低さ

そして、もう一つの大きな要因は、日本社会の「社会的慣用力の低さ」です。これは、新しいものや異なるものを受け入れ、それらに柔軟に対応する能力、あるいは多様な価値観を許容する心の広さが、現状では十分に育まれていないことを意味します。残念ながら、メディアの報道やインターネット上の言論において、外国人労働者を一括りに「安い労働力」や「問題の種」として捉えるような偏見が根強く残っていることも、この慣用力の低さの表れです。特定の外国人コミュニティで発生したごく一部の問題が、あたかも外国人全体の問題であるかのように誇張され、不必要な不安や排他的感情を煽ることが少なくありません。

この慣用力の低さは、外国人労働者が日本で生活する上での「見えない壁」となって立ちはだかります。例えば、住居の確保は、その典型的な例です。外国人であることを理由に、賃貸契約を拒否されたり、保証人探しに苦労したりすることは日常茶飯事であり、これは外国人労働者の生活の根幹を揺るがす問題です。不動産業者や大家が、文化や習慣の違いからくるトラブルを過度に恐れたり、言葉の壁を理由に契約を避けたりすることが背景にあります。

また、子どもの学校教育や、病気や怪我の際の医療機関での受診など、公的なサービスを利用する際にも、日本特有の慣習や制度が大きなハードルとなります。多言語対応の不足、外国人への理解が不十分な窓口対応など、行政サービスや公共機関において、多様な利用者への配慮がまだ十分ではありません。地域活動への参加をためらわれたり、外国人の子どもが学校でいじめを受けたりするなど、表面化しにくい差別的な経験をすることも報告されており、彼/彼女らが日本で安心して暮らすための生活基盤が十分に整備されているとは言い難い状況です。

これらのコミュニケーションの壁と社会的慣用力の低さが生み出す見えない壁は、外国人労働者の精神的な負担を増大させ、孤独感を深めます。そして、それは「自分はここにいても良いのだろうか」「ここで頑張っても報われないのではないか」という絶望感へと繋がり、日本で働くことへの意欲を著しく削ぎ、結果として彼/彼女らの日本離れを加速させる可能性を秘めているのです。私たちは、これらの課題に真摯に向き合い、言語教育の支援だけでなく、異文化理解を促進する啓発活動や、外国人にも開かれた地域社会の形成に向けた具体的な取り組みを強化していく必要があると考えています。

法制度の硬直性と人権課題:時代に即した変革の必要性

「法制度の硬直性」も、外国人労働者受け入れにおける本質的な課題として指摘せざるを得ません。現在の外国人労働者の受け入れに関する法制度は、依然として特定の業種や技能に限定される傾向が強く、少子高齢化と産業構造の変化によって多様化する日本の労働市場のニーズに、柔軟に対応しきれていない部分があります。

特に、技能実習制度については、本来の目的である「国際貢献」と、実態としての「労働力確保」との乖離が指摘されて久しい状況です。実習生の転籍の自由が極めて制限されていること、失踪問題、一部での人権侵害の事例などが度々報じられ、国際社会からも改善を強く求められています。これにより、労働者の権利保護が十分に図られていないとの批判もあり、より人権に配慮した制度設計への転換が喫緊の課題です。また、日本語学習の機会の提供、専門スキルを向上させるためのキャリアアップ支援、永住権取得への道のりなど、外国人労働者が日本で長期的なキャリアを形成し、社会の一員として活躍するためのインセンティブや支援策が、制度として十分に確立されているとは言えません。

解決策の提案:共生社会実現へのロードマップ

これらの複雑に絡み合った課題に対し、私たちは具体的な解決策を提案し、その実現に向けて日々尽力しています。

多角的な情報提供と最適なマッチング
最も重要なのは、「多角的な情報提供とマッチングの最適化」です。来日前から、日本の労働法規、賃金体系、社会保険制度、納税義務、生活習慣、文化に関する詳細な情報を、多言語で、かつ正確に提供することが不可欠です。単なる書面での説明に留まらず、現地の言葉で制作された動画コンテンツ、オンライン説明会、日本の生活を疑似体験できるコンテンツなどを活用し、よりリアルで理解しやすい形で情報発信を行うべきです。

弊社では、求職者に対し、日本の気候、食事、公共交通機関の利用方法に至るまで、生活全般に関するオリエンテーションを徹底しています。同時に、受け入れ企業側には、外国人労働者の専門スキルだけでなく、彼/彼女らが持つ文化や価値観、宗教上の配慮などを理解するための研修を義務付けるなど、相互理解を深めるための努力を促すべきです。単なるスキルマッチングに留まらず、文化的な適合性、個人のキャリアプラン、そして企業の求める人材像を深く掘り下げた上で、最適なマッチングを実現することで、早期離職のリスクを低減し、双方にとって持続可能な関係を構築します。

社会的受容性の向上に向けた包括的啓発活動
「社会全体での受容性向上に向けた包括的な啓発活動」を強化する必要があります。外国人労働者は、単なる「働き手」としてではなく、地域社会の一員として、日本の文化や経済に新たな価値をもたらす存在であるという認識を広めるためのキャンペーンを、国を挙げて推進すべきです。メディア、教育機関、地域コミュニティが連携し、多文化共生の重要性、彼/彼女らが直面する課題、そして彼/彼女らが日本社会にもたらす貢献について、積極的に情報発信を行うべきです。

具体的な取り組みとしては、地域住民と外国人労働者が交流できるイベント、多文化理解のためのワークショップ、外国人労働者による文化紹介イベントなどを定期的に開催し、相互理解を深める機会を創出することが有効です。弊社も、地域の日本語教室や NPO 法人と連携し、外国人労働者向けの生活相談窓口の設置や、日本での生活に役立つ情報提供イベントを定期的に開催し、彼/彼女らが日本社会にスムーズに溶け込めるよう多角的に支援しています。行政、企業、地域住民が一体となって、真の多文化共生社会の実現に向けた取り組みを進めることが不可欠です。

柔軟で人権に配慮した法制度への転換

そして最も根幹となるのが、「より柔軟で人権に配慮した法制度の整備」です。特定技能制度のように、より幅広い分野での受け入れを可能にする制度を拡充するとともに、労働者の権利保護を強化する法改正が喫緊の課題です。特に、技能実習制度については、抜本的な見直しを行い、転籍の自由を保障し、不当な労働環境からの脱却を容易にする仕組みを確立することが不可欠です。これにより、労働者のモラル向上に繋がり、ひいては日本の労働市場全体の健全化にも寄与すると考えます。

また、日本語教育を義務化し、その費用を企業または国が負担する制度を導入するなど、外国人労働者が主体的にスキルアップできる機会を制度として保障すべきです。専門スキルの資格取得支援、キャリアコンサルティングの提供、永住権取得への明確なロードマップの提示なども、彼/彼女らの日本での長期的な定着を促し、日本の持続的な経済成長に貢献するでしょう。政府は、外国人労働者を「一時的な労働力」と捉える近視眼的な視点から脱却し、「日本の未来を共に築く貴重な人材」として位置づけ、長期的な視点に立った制度設計を行うべきです。

共生社会への投資は未来への投資

外国人労働者の受け入れは、単なる経済活動に留まらず、日本社会の多様性を豊かにし、国際的な競争力を高めるための重要な挑戦です。課題は山積していますが、それらを一つ一つ克服し、外国人労働者が安心して働き、生活できる環境を整備すること、そして彼/彼女らが持つ能力を最大限に発揮できるような共生社会を構築することは、私たちの未来への投資であると確信しております。