コラム

外国人労働者の「定着」を決めるメンタルヘルス対策| 孤独を防ぎ組織を強くする相談体制の構築

2026.01.05

2026 年を迎え、外国人労働者の受け入れ数は過去最高を更新し続けています。多くの企業様が特定技能制度などを活用し、現場の人手不足解消に尽力されていますが、採用数が増える一方で、新たな、そして非常にデリケートな課題が浮き彫りになってきました。それが「外国人労働者のメンタルヘルス」の問題です。

技能や日本語能力には目が行きがちですが、彼/彼女らの「心の健康」こそが、長期定着と生産性向上の最大の鍵を握っています。異国の地で働く彼/彼女らが抱える孤独やストレスは、日本人が想像する以上に深く、複雑です。本稿では、数多くのインドネシア人材と接し、企業様と伴走してきた株式会社 CONVI の視点から、外国人労働者のメンタルヘルスの実態と、企業が整備すべき相談体制について、現場の事例を交えながら詳細に解説いたします。

 

なぜ、外国人労働者のメンタルヘルスケアが経営課題なのか

まず、経営者の皆様に認識していただきたいのは、メンタルヘルスケアは単なる「福利厚生」ではなく、企業のリスク管理であり、成長戦略そのものであるという点です。どれほど優秀な技術を持った人材でも、心が折れてしまえばパフォーマンスは低下し、最悪の場合は失踪や帰国、あるいは労働災害につながるリスクがあります。

来日する外国人労働者、特に私たちがご紹介しているインドネシアの若者たちは、大きな希望と同時に、借金を返済しなければならないというプレッシャーや、家族を母国に残してきた寂しさを抱えています。彼/彼女らは「出稼ぎ」という一時的な滞在ではなく、人生を賭けて日本に来ています。そのため、弱音を吐くことは「恥」や「家族への裏切り」と感じてしまい、ギリギリまで我慢してしまう傾向があります。表面上は笑顔で働いていても、内面では深刻なストレスを抱えているケースが少なくありません。この「見えない SOS」に早期に気づき、ケアできる体制があるかどうかが、企業の離職率を大きく左右します。

 

異文化ストレスと「心の孤立」のメカニズム

彼/彼女らのメンタル不調を引き起こす要因は、複合的です。最も大きな要因は「言葉の壁」によるコミュニケーション不全ですが、それ以上に深刻なのが「文化的な孤立」です。

例えば、インドネシアには「ゴトン・ロヨン(相互扶助)」という文化があり、常に誰かと助け合い、密接に関わりながら生活することに慣れています。しかし、日本、特に都市部の生活は個が独立しており、職場と寮の往復だけの生活になりがちです。このギャップが強烈な孤独感を生みます。また、日本独特の「空気を読む」文化や、曖昧な指示、あるいは叱責の際の強い口調などが、彼/彼女らにとっては「自分は歓迎されていないのではないか」「嫌われているのではないか」という不安を増幅させる引き金となります。

さらに、生活習慣の違いもボディブローのように効いてきます。イスラム教徒にとっての「食の制限(ハラール)」や「礼拝」は、単なる習慣ではなくアイデンティティそのものです。職場周辺にハラールフードが手に入らない、飲み会で配慮がない、礼拝への理解がないといった状況が続くと、自分が自分らしくいられないという自己肯定感の低下を招き、うつ状態に陥るリスクが高まります。特にラマダン(断食月)の時期は、肉体的な疲労に加え、精神的にもナーバスになりやすいため、周囲の無理解が決定的な亀裂を生むこともあります。

 

現場で機能する「実効性のある」相談体制とは

では、企業は具体的にどのような対策を講じるべきでしょうか。形だけの「相談窓口」を設置しても、ほとんど機能しません。なぜなら、上司や人事担当者には、評価への影響を恐れて本音を話せないからです。必要なのは、幾重にも重なったセーフティネットの構築です。

第一に、社内における「ナナメの関係」を作ることです。直属の上司ではなく、部署の異なる先輩社員や、年齢の近い日本人スタッフを「メンター」として任命し、業務以外の雑談ができる関係性を構築します。特に大阪の企業様が得意とする「お節介」なコミュニケーションは、実は彼/彼女らにとって非常に心地よいものです。「ご飯食べたか?」「寒くないか?」といった何気ない声かけが、彼/彼女らの承認欲求を満たし、孤独感を和らげる特効薬となります。

第二に、母国語で相談できるルートの確保です。微妙なニュアンスや深い悩みは、やはり母国語でなければ伝えきれません。社内に同じ国籍の先輩がいればベストですが、そうでない場合は、私たちのような支援機関の通訳や生活指導員を活用することが不可欠です。重要なのは、トラブルが起きてから相談するのではなく、定期的な面談を通じて「ガス抜き」をすることです。

 

株式会社 CONVI が提供する「心の居場所」としてのサポート

私たち株式会社 CONVI では、人材を紹介して終わりではなく、入社後のメンタルヘルスサポートを最重要視しています。私たちが目指しているのは、彼/彼女らにとっての日本における「第二の実家」、いわゆるサードプレイスになることです。

具体的には、インドネシア人スタッフによる24時間体制の相談ホットラインを設けています。仕事の悩みはもちろん、家族とのトラブル、恋愛相談、あるいは「日本の野菜の調理法がわからない」といった些細なことまで、あらゆる相談を受け付けています。同郷のスタッフが「お兄さん、お姉さん」のような立場で話を聞くことで、彼/彼女らは心理的な安全性を確保できます。

また、企業様に対しても、定期的に彼/彼女らの精神状態や生活状況をレポートし、現場での指導方法やコミュニケーションの改善提案を行っています。「最近、表情が曇っている」「遅刻が増えた」といった兆候があれば、すぐに私たちが介入し、本人と面談を行うことで、問題が深刻化する前に芽を摘みます。さらに、インドネシアの文化や宗教的背景を理解していただくための日本人社員向け研修も実施しており、受け入れ側と外国人材の双方の心の溝を埋める努力を続けています。

 

メンタルヘルスケアがもたらす企業の未来

適切なメンタルヘルスケアと相談体制が機能している企業では、驚くべき好循環が生まれています。
まず、定着率が圧倒的に向上します。自分のことを理解し、守ってくれる会社に対して、彼/彼女らは強い帰属意識(エンゲージメント)を持ちます。その結果、技術の習得スピードが上がり、生産性が向上します。さらに、彼/彼女らの明るく前向きなエネルギーが日本人社員にも伝播し、職場全体のコミュニケーションが活性化したという事例も、大阪の製造現場や介護施設で数多く見受けられます。

逆に、メンタルヘルスを軽視し、彼/彼女らを単なる「労働力」として扱ってしまえば、SNSなどを通じて悪評が広まり、新たな採用が困難になる時代です。外国人労働者に選ばれる企業になるためには、「心のケア」ができるかどうかが最大の差別化要因となります。

 

おわりに:大阪から「誰もが働きやすい」社会へ

外国人労働者のメンタルヘルス対策は、特別なことではありません。それは、「従業員一人ひとりを大切にする」という経営の原点に立ち返ることに他なりません。言葉や文化が違っても、嬉しいと感じること、辛いと感じる心の動きは同じ人間です。

株式会社 CONVI は、大阪を拠点に、企業様と外国人材の間に立ち、時には通訳として、時にはカウンセラーとして、双方の想いをつなぐ役割を果たします。もし、外国人材の元気がない、コミュニケーションがうまくいかないとお悩みでしたら、ぜひ私たちにご相談ください。彼/彼女らの笑顔を取り戻し、御社の戦力として長く活躍してもらうための解決策を、共に考え、実行させていただきます。

人手不足の時代を勝ち抜くために、まずは働く人の「心」を守ることから始めましょう。私たちはそのための最強のパートナーでありたいと願っています。